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DCTの夜明け ニューノーマルな日本型治験モデルの可能性と展望
IQVIAジャパン メディアセミナー 開催レポート (2021年10月6日開催)
Corporate Communications, IQVIA Japan
Oct 06, 2021

IQVIAジャパンは2021年10月6日(水)にメディアセミナーをオンライン開催。16年治験責任医師として従事、治験プロトコル数が200以上、また2018年に日本初の訪問型治験の責任医師となり50症例以上(臨床研究含め200以上)である、東京センタークリニック・長嶋 浩貴様による基調講演でセミナーが開催された。

Keynote

新型コロナ感染拡大によって可視化されたDecentralized Clinical Trials(分散型臨床試験:以下DCT)の可能性

現段階で日本におけるDCTは「夜明けの状態である」とし、医師はもちろん、多くの関係者にとっての共通目標であるDCTの実現を呼びかけた。
「最初から大きな目標を実現しようと思ってもなかなか難しいが、なんとか実現させる為にも、私も現場の医師として微力ながら、小さな一歩から日本におけるDCTの実現に寄与していきたい」

DXの利活用で実現する新患者中心主義×新型コロナ後の世界=DCT

紀元前から説かれる「ヒポクラテスの誓い」。すべての医療従事者が共有しているこの古典的かつ普遍的な倫理観、「患者中心主義(ペイシェントセントリシティ)」に変化が起きている。また、時代に合わせた変化が必要な時期でもある。新型コロナパンデミックが、ペストやスペイン風邪と同じく、大きな価値観の転換、「新患者中心主義」への変化を推し進めるきっかけとなったことは明白。それにはDXの利活用実現が必須であり、治験のあり方も同じく大転換期にある。
「患者の意向が反映された形で治験を実施すること。あるいは患者自らが製薬、創薬に参画するなど、インシデントエンゲージメントからヒューマンエンゲージメントへの変化も見られます。従来の医療機関中心の臨床試験から、来院に依存しない患者中心の“自宅にいながら治験を実施できる”体制を作るべき」

海外のDCTの現状と日本の遅れ

アメリカでのDCTマーケット予測(2016年〜)では、年間5.7%ずつの成長予測が出ており、2021年現在78億ドルが2028年には115億ドル規模に拡大するとされていた。それが新型コロナパンデミックにより、急成長。
「2020年には4000治験中65治験がDCTで実施されたとの報告もあり、解釈によりさらに多くのDCTが行われている可能性」を指摘した。「製薬企業の80%は電話診療等DCT要素を実地済みなど、海外では一般化している反面、すでに80%がグローバル(国際共同)治験にも関わらず、日本では進んでいない。DCTが進まないことで、グローバル治験に参加できないジャパンパッシング、ドラッグラグを非常に懸念している。」

目指すべき「ニューノーマルな日本型DCT」

長嶋先生の実体験として、2018年日本初の訪問型治験の際「他人が自宅に入ることへの抵抗感が強く、同意を得られたのはたった一人」であったこと、また物理的効率の悪さ、費用計算の複雑性が紹介された。2020年以降のコロナ禍では、医師の感染、クリニック閉鎖の中での治験実施をきっかけに、DCTが急務に。専門チームの編成、電子カルテのシステムをすべてクラウド型に入れ替え、モバイルナースなど人的リソースの確保、ウェアラブルデバイスの活用など、ハイブリッドDCTを実施。「高齢者とウェアラブルデバイスの相性は良く、治験においては1対1のオンライン診療ツールよりもZoomなど複数が共有できるものが有用。

現在、コロナ治療薬・予防薬の治験は、複数プロトコルの相談、新計画の段階。主に自宅、ホテルの軽症患者を対象に、オンライン診療と看護師、CRCの訪問、ウェアラブルデバイスの活用を想定している。
「日本の治験環境においては、完全な在宅型となるフルDCTよりも、来院型と在宅型のハイブリッドDCTが合理的だと考える。従来の治験とDCTは二律背反ではなく、またDCTとは目的ではなく手段である。centralize、realとde centralizeなど、バーチャル化のバランスの最適化が日本における成功の鍵になる」
理想的なDCTチームは、①バーチャルPI&CRCによっていつでもどこでも被験者とコンタクトが取れる。②デジタルデバイス③近隣医連携型もしくは訪問型、また訪問への抵抗感には検診車などの利活用。こうした3分野の整備によって、2025年には全体の10%、2030年には約30%をハイブリッドDCTでカバーできるのではないかと予測した。

⻑嶋 浩貴 様 プロフィール
(東京センタークリニック 院⻑ 臨床研究センター⻑ 責任医師)

1988年千葉⼤医学部卒後,東京⼥⼦医⼤学循環器内科⼊局。岡崎国⽴共同研究機構⽣理学研究所(当時),⽶ハーバード⼤学留学を経て,99年東京⼥⼦医科⼤学⾎管研究室⻑。東京ハートセンター副院⻑兼臨床薬理研究所⻑,永寿総合病院柳橋分院副院⻑兼臨床試験センター⻑などを経て,2019年より現職。 治験責任医師を務めた治験は200+。2018年には⽇本初の訪問型治験の責任医師。その後DCT症例50+(臨床研究を含め200+)を経験。

IQVIA Information

臨床開発をオーケストレーションでご支援する IQVIAテクノロジーソリューション
IQVIA テクノロジーソリューションズ 千葉 徹也

IQVIAのITソリューションは、オーケストレーションというコンセプトで、個別の業務に最適化されたソフトウェアを関連業務にハーモナイズできるようにアップデートしている。その範囲は、開発から製造、営業、マーケティング、安全性と、臨床開発から製販後までライフサイクル全域がカバーされ、薬事規制の範囲ではデータベースや薬事情報自体の管理システムもラインナップに加わる。

DCT関連での臨床開発において、千葉は「治験参加経験のある患者さんは5%以下。施設側の約半分で症例登録は目標未達。治験開始後、患者さんの三分の一が中途脱落などあり、最終的に創薬からマーケットへの流通までに10年を要するとの報告がある」と指摘した。 日本における治験の参加阻害要因である来院回数の多さ、来院日程調整、時間的制約、通院負担などはDCTによる改善が見込まれる。また、コロナ禍において総臨床試験数は低下したものの、特にがん領域においては史上最高レベルで増加傾向にある。ただし、疾患ターゲットの複雑さなどから生産性は低下しているとしたIQVIA Instituteの分析も提示。

IQVIAは、治験において重要なデザインからクローズまでをカバーして様々なサポートを提供しているプロバイダーとして、CROチームとITオペレーションとのシナジーによるトータルソリューションとなる強みを生かした、日本のDCTへのコントリビューションを紹介した。

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