Institute Reportは、米国のIQVIA Institute for Human Data Scienceが発表する刊行物です。 本文や解説全ての正式言語は英語であり、その内容および解釈については英文が優先します。原文の英語版はこちら https://www.iqvia.com/en/institute/reports/global-oncology-trends-2019
近年、記録的な数の新しいオンコロジー領域の医薬品が承認され、新たな治療オプションを患者にもたらしていますが、活発なパイプラインにもかかわらず、オンコロジーは研究開発にとって難題な領域です。このレポートでは、オンコロジー領域のパイプラインの生産性とアウトプット、新しい作用機序、そして新たな治療の恩恵に預かる可能性のある患者について調査しています。本調査では世界的なオンコロジー領域の医薬品の支出、臨床試験活動、複雑さと成功、そして2023年までの展望に焦点を当てました。レポートでは、免疫療法、次世代バイオ医薬品およびバイオシミラーの参入による治療法の変化についても言及しています。
2018年には、17の適応症に対し記録的な数である15の新たなオンコロジー領域の治療薬が上市されました。新しい治療法の半数以上が経口剤として提供され、希少疾患の適応症、もしくは予測バイオマーカーがその効能に含まれています。また最近導入された治療法は、様々な癌種に幅広く初期段階の治療で使用されてもいます。米国では2017年以降免疫療法の使用は倍増し、HER-2陰性乳癌に対する新規サイクリン依存性キナーゼ4/6阻害剤(新規CDK4/6阻害剤)による治療が米国と欧州で激増しています。
後期開発段階にある薬剤のパイプラインは2018年だけで19%、2013年以降で63%拡大しており、パイプライン内および臨床開発の全段階を通じ、60以上の作用機序を有する450種近い免疫療法に最も集中しています。細胞、遺伝子およびヌクレオチド療法として定義される、98の次世代バイオ医薬品もまた、臨床研究段階にあり、18の異なるアプローチを活用しています。
パイプラインが活発であるにもかかわらず、オンコロジー領域は研究開発にとって最も困難な薬効領域の1つであり、高い失敗リスクと長い開発期間に直面しています。次相移行の総合的成功率は、2017年の11.7%から2018年は8.0%へと減少し、オンコロジー領域の治験の期間は他の薬効と比較して依然長くなっています。過去5年間でオンコロジー領域の治験の第Ⅰ相試験の複雑さも上昇しています。オンコロジー領域の治験の試験に対する成功率で評価された全体的な生産性(複雑さと期間)は、2010年以降22%改善しましたが、他の薬効の試験と比べ依然はるかに低くなっています。
がん患者の治療に使用される全薬剤支出は、15.9%増加した治療薬に牽引され、2018年には12.9%増加して1,500億ドルに達し5年間連続で2桁成長を記録しました。中央値は2018年に13,000ドル下がって149,000ドルとなったものの、新薬の平均年間コストは上昇傾向にあり、製品当たりのコストは9万ドル~30万ドルの範囲にあります。中国は支持療法が10%減少したにもかかわらず、医薬品新興国市場の支出と成長を牽引し、2018年には24%増の90億ドルにまで成長しました。今後5年間で、治療費は年平均成長率ベースで11~14%増加すると予想され、市場全体は2,000~2,300億ドルにおよぶと予測されます。