Institute Reportは、米国のIQVIA Institute for Human Data Scienceが発表する刊行物です。本文や解説全ての正式言語は英語であり、その内容および解釈については英文が優先します。原文の英語版はこちら Emerging Biopharmas Contribution to Innovation (ENG)
新興バイオ医薬品企業(EBP: Emerging biopharma)は、初期段階の医薬品開発とそのパフォーマンスの根源を成しており、事業環境や医療システムにおけるこれらEBP企業と他のステークホルダとの関係は、多くの最新治療や医療技術の将来を決定する重要な役割を担っています。このレポートでは、EBP企業とEBP企業の新たな製品パイプラインの現状、臨床試験活動、および試験の成功レベルについて明らかにしています。さらに、本レポートでは、EBPの効果的な開発や新製品のマーケティングにつながる融資取引、戦略、組織構造に焦点を当て、EBPの全体的な展望を評価し、主要なトレンドが将来の成果をどのように形成するかに焦点を当てています。
新興バイオ医薬品企業(以下EBP)は、ライフサイエンスにおけるイノベーションと開発の大部分を占める企業としてセグメントされています。EBP企業は、推定の年間研究開発費が2億ドル未満、グローバル全体の売上高が5億ドル未満と定義されています。2018年にEBPの対象となる3,212社は、2003年の52%から増加して開発後期段階の73%を占めています。また、EBPが開発中の成分数は過去2年間で各年15%ずつ増加しています。
EBPによるイノベーションへの貢献度は拡大しており、EBP企業は2018年には全米の売上高の40%を占める現在の上位医薬品100剤のうち、29剤の特許を保有しています。2018年に上市された医薬品で、EBPがオリジネーターとして上市された新薬は42%になり、2017年の26%から増加しました。一般的にEBP由来の製品は、EBP以外にセグメントされる企業に買収されて発売された場合より早くに市場参入しています。EBP企業が新薬を発売するまでの期間の中央値は2018年で16.6年であり、他にセグメントされる企業より30%以上遅くなっています。
EBPと大規模な企業の提携は2018年の業務提携上位10件のうちの9件を占め、M&Aでは、EBPは2018年の上位10件のうちの7件に関与していました。また、申請前段階の取引も78%増加し、2017年の36件から62件に増加しました。大手製薬会社は引き続き企業間及びEBPとの間で資産買収やライセンス供与を行っており、2018年には評価対象企業45社において開示総額2,720億ドルで415件におよぶ取引がありました。
2008年にシリーズAの資金調達を受けたスタートアップは168社で、10年後にこれらの企業は様々な成果を達成しており、最近資金調達を受けたスタートアップのパフォーマンスに関する有用なベンチマークとなっています。このうち51%が株式非公開企業で、17%が株式公開しています。上場企業28社のうち、5社は現在時価総額が10億ドル超となっています。
今後5年以上に、研究開発と製品化に取り組むEBPは厳しい環境変化に直面しその状況に適応する必要があると思われます。臨床試験におけるバイオマーカーの使用はEBPの臨床開発に最大の影響を及ぼし、平均34%の生産性増加をもたらし、治験のリクルートをリポートする事前スクリーニング済みの被験者プールは、平均で29%の生産性増加をもたらすと予想されます。今後5~10年の間に、EBPが成功するために重要となる大切な3つ要素は、データ利用と分析力、テクノロジーの導入、柔軟なビジネスモデルを採用する必要性です。